必要な情報はどこにあるのか

2004年12月、福島県の県立病院で、出産中の女性が失血死しました。


私事ですが、先日出産した身内が、実に2リットル以上も出血しました。
予見されていたので、自分の血液を採り貯めており、その輸血で存命しています。


出産ではまれに、大量出血することがあります。


今を去ること30年以上前なので、原因は本人も忘れたと言っていますが、私の母が出産するときも大量出血で、一時危篤状態になったそうです。


「まれ」「ごくまれ」といわれるようなことが、私の近親者に2人もおきています。
一般にお産には、母子の命を脅かす、ある程度の危険があります。
予見できる場合も、できない場合もあるでしょう。
危険が予見できたとしても、予見できない経過のせいで、予見通りに進まないこともあります。
専門家にも、一瞬の躊躇や観測違いはあるでしょう。

それでも、我々は、病院で、助産所で、専門家の介助を得て、出産します。



冒頭の県立病院の産科医師は、2006年、業務上過失致死の疑いで逮捕されました。逮捕の時から、今朝の判決前のニュースまで、テレビでは医師の顔や歩く姿がくり返し放映されています。


そして今日、医師は、裁判で、無罪となりました。


多くの医師たちがこの逮捕について非難の声を上げています。
事前に警察から情報を得ていたマスコミが、逮捕の時に手錠をかけられた医師の姿を大々的に報道したことから始まり、マスメディアに対する医療界の不信も深刻です。


朝のニュースでは、遺族の無念の声が聞かれました。
しかし、被告の声はまったく伝えられないですし、弁護士の肉声も聞けませんでした。


日経メディカルオンラインに、被告主任弁護人のインタビュー記事が載っています。http://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/mem/pub/report/t020/200808/507534.html


裁判の争点が簡潔にまとめられています。少し難しいところはありますが、この内容なら、専門家ではなくても理解できると思います。


どんな情報が、どういう形で提供されれば、我々は医療の過失について、医療の専門家と意義ある話し合いができるのでしょうか。そういう視点で、これから数日の報道を受け止めてみたいと思います。