ワークショップ演習Ⅱ(庄嶋孝広先生)

ファシリテーション・スキルおよびワークショップ企画実践法」の第2回目(午後1時〜午後4時15分,SCS講義室)。12月3日の中野民夫先生の授業に引き続き,今回は,まちづくり支援が専門のNPO法人「東京ランポ」(東京・世田谷)の職員で,ファシリテーターの庄嶋孝広先生の演習でした。

前半は,輪になって自己紹介をしながらアイスブレーキングをした後,8人ずつ二つのグループに分かれて,壁に貼った模造紙を使って細切れの意見を出し合うブレーンストーミングの技法を演習しました。庄嶋先生からは,意見を出し,整理するための方法にも,発言準備・発言順・記録媒体・記録者などの組み合わせによって,さまざまなバリエーションがあり,「KJ法」もその一つであることなどが紹介されました。

休憩をはさんで,後半は,「自治体を破綻させないための処方箋はどれか?」というテーマで,埼玉県のある自治体で実際に検討された財政改革プランを例にとり,前半と同じ8人のグループに分かれ,選択肢を検討して合意形成を図る技法を練習しました。(A)サービスはこれまで通り行い,赤字分は市民が負担する,(B)市民の負担は変えずに,サービスをやめていく,(C)市民ができることは市民が行い,負担を増やさずにサービスも維持していく――という三つの選択肢について,色分けした付箋紙を使って各選択肢のメリット・デメリットを出し合ったうえで,メンバーの合意で三つの選択肢に順位をつける作業をしました。

最後に,ワークショップの企画実践法として,あらゆるテーマに共通する「現状→ビジョン→方策」「発散→収束」というプロセスを軸に,さまざまなワーク(作業)を組み合わせて,ワークショップ全体を設計する方法を解説していただきました。とくにこのあたりは,実践例は多いものの参考にできる書籍などは少なく,非常に貴重なお話だったと思います。

庄嶋先生は,各地でワークショップやファシリテーションの研修をされていますが,今回授業を終えられて,CoSTEPの受講生の反応がよく,短時間にテキパキと動き,積極的に演習に参加していたことに感心されていました。こうした講評をいただいて,授業担当サポーターとしては,いま受講生の皆さんの間に,ワークショップに対する関心,ワークショップ熱が高まっていることが大きな要因としてあるのではないかと感じました。

今回の演習の中でも,庄嶋先生から全員に,「どんなことにワークショップを生かしたいですか」という問いかけがありましたが,受講生の皆さんからは,職場や研究室,地域活動の場など,それぞれの現場でのさまざまな活用のアイデアが挙がっていました。12月9日のサイエンス・カフェ(サンタのふるさとの科学教育)でも,小学生向けのワークショップが大好評でしたが,CoSTEPやその周辺では,科学技術コミュニケーションに広い意味でのワークショップ的な方法(参加・体験・相互作用の場づくり)を生かしたいという熱が高まっているように感じます。

庄嶋先生は,「ワークショップは,手順どおりにやればたちどころに結論に至るような『魔法』ではなく,丁寧に議論することで納得性を高めて結論を得るものだ」ともおっしゃっていました。今回の二度のファシリテーション・ワークショップ演習を通じて学んだ知識や技法を,受講生の皆さんがそれぞれの現場に応用しつつ,よりよい参加・体験・相互作用の場をつくり出していただければと思います。

なお,演習Ⅱ「場の創出と実演」は,来年1月,2月にあと4回の授業(第12〜15回)があります。この4回は「協働の作法」と題して,これまで学んだ情報デザインの基礎,ワークショップ,ファシリテーション,プレゼンテーションなどのスキルをフル活用し,ある課題について5,6人のグループで協働して提案をまとめる演習を行います。(三上)