「ニュース記事を枕に、サイエンスライティングをしてみよう」という課題を昨年の授業で出しました。2ヶ月ほど間が空いてしまったので、かえって仕上げるのが大変だったと思います。
 この課題の一番の目的は、「あたる資料の質を考える」ということでした。インターネットを使えば、ほとんどことたれりの時代に、より新しく、より信憑性の高いリソースにあたり、自分ならではの記事を書くにはどうしたらいいのか考えていただくための課題でした。皆さんには、自分が参考にした資料もすべて持ってきていただきました。
 やはり、資料の大方はネット上から引き出したものでした。役所の資料などは、今や多くがネット上に公開されていますので、わざわざ足を運べばよりよい資料があるというものでもありません。しかしすでに簡潔にまとめられたネットの資料を使っていると、ともすると誰かさんが書いたものを切り貼りしただけのものになりがちです。
 しかし、短いリニモの記事を書くのに、原理を書いた教科書を借りてきて勉強した人がいました。また、ノロウィルスについての資料はネット以外ではなかなか見つけられなかったそうですが、内科の専門雑誌に掲載された記事を見つけた人がいました(さすが医学部生)こうした記事を見つけ、読み解くのは手間ですが、理解が進むほどに、他人とは違う視点で記事を書きやすくなります。
  ネット上の資料を使うと玉石混交で、様々な異論が出てきて、資料の信憑性について議論ができるかなと思っていたのですが、皆さん手堅い資料を集めてきていて、ネットリテラシーが非常に高いことがわかりました。この課題については、全員合格点です。
 ということで、授業後半の公開添削コーナーでは、「使った資料を主に検討する」と言って提出していただいたのに、内容に踏み込んだ添削になってしまいました。ご協力いただいた皆さん、すいませんでした。
 提出していただいた文章に共通していた(そのほかの人にも共通しています)問題点は、データ・資料を収集するのは非常に優れているのですが、それをどのように整理して、自分ならではの切り口で見せるかということです。テーマとなった対象を、サイエンスといった視点でもっと高いところから見たときにどう見えるかというところまで対象から離れて俯瞰する必要があります。そうした上で、自分の伝えたいことを最後まで読ませるテクニックとして、どんなストーリーで最後まで読者を引っ張っていくのか、構成を考えてください。速報性を求められる新聞記事などでは、情報を並べるだけでも意味がありますが、時間をかけて書くことができる一般向けの読み物では、工夫が必要です。新聞やインターネットは多くの人が誰でも見られるものですから、その情報を並べただけでは、誰にも必要とされない記事になってしまいます。あなたのその記事をよんでよかったなと、ちょっとでも読んだ人にお得感がある記事に仕上げてください。

 次回課題は、一つのテーマについて対立する二つの小論文をお渡ししました。これを読んで、「どちらが説得力があるか、もしくはどちらも説得力ない、自分はこう思う」という説得力ある文章を書いてください。というものです。
 説得のためには、どのようなデータを取り上げ、それをどう見せるか。これは、埴岡先生の授業が大いに参考になると思います。こういったタイプの文章では、ストーリーというよりも、論理的な構成を工夫してください。楽しみにしていまーす。(難波)